Bさんは自身の経験から、日本企業は“過去の経歴がきれいな人”を求めているのではないか、と話す。
「僕が学生だった頃も、『既卒』になったらまともに就職できない、みたいな空気がありました。僕もそれがすごく怖くて無理にでも企業に入ったのですが、案の定辞めてしまい、経歴のブランクが発生。一時フリーランスやアルバイトもしていたので、経歴はガタガタです。それで転職活動をすると、空白期間のことを根掘り葉掘り聞かれる。年齢にもよりますが、スキルよりも経歴が注目されてしまうことは多いです」(Bさん)
こうした日本企業の採用にまつわる慣習を、日本への留学経験がある30代タイ人女性会社員・Cさんに伝えると、「日本らしいですね」と苦笑しながら、自身の経験を語ってくれた。
「タイだと、そういったブランクについては聞かれることも、マイナスになることもほとんどありません。私は就職した会社が倒産して離職したり、フリーランスで働くなど、履歴書に“ブランク”が生じていますが、企業側にそれについて聞かれることはほとんどありませんでした。
留学し、スキルを磨いたうえで挑んだ転職活動時には、外資企業など10社を受けて9社合格。しっかりとスキルがあり、的確にアピールできれば、就業年数もそこまで影響しません。確かに日系企業からはブランクについて聞かれることもありましたが、日本人の友人によると、海外にある日系企業はスキル重視で、ブランクは気にしない企業が多いようです」
日本企業の採用慣習についてCさんは、「就業年数重視」ではないか、と分析する。
「仕事の能力がある人=仕事を続ける人、ではありませんよね。海外留学や資格の勉強という意味のあるブランクでも、日本企業が嫌がる傾向が強いのは、就業年数が何よりも大切だと考えているからではないでしょうか。スキルよりも『ずっと長く勤めてくれる人』を求めている気がします。忠誠心を期間ではかるのでしょう。そしてそれが年功序列につながる。
日本でも、終身雇用が崩壊しつつあると聞いています。それなら、長く働けそうな人ばかりを優先するのではなく、柔軟にスキル重視の採用に切り替えて、優秀な人にもっと賃金を出すべきでは」(Cさん)
終身雇用が当たり前でなくなった昨今、日本企業の採用スタイルも変わらなければならない時期に来ているのかもしれない。