企業は生き残るためにリストラと派遣切りに走り、派遣労働者だけで20万人が仕事を失い、失業率は過去最高の5.7%に達した。街に失業者が溢れ、2年連続で年末に炊き出しの「年越し派遣村」が設営された光景が目に焼き付いている。
それでも、あのときはまだヒトもモノも動き、品不足は起きなかった。今回はそれ以上の危機を迎えている。60代以上なら、半世紀前の第一次石油ショック(1973年)を思い出した人もいるのではないか。
当時はテレビ放送の自粛をはじめ、トイレットペーパーから洗剤、砂糖、灯油など生活必需品の買い占めと売り惜しみで消費者物価が年23%上昇、戦後初めてGDPがマイナスとなり、日本の高度経済成長は終わった。
そしてコロナ・ショックがアベノミクスによる「戦後最長の景気拡大」を終わらせるのはもはや間違いない。
焼け石に水の対策ばかり
安倍首相は「経済をV字回復させなければならない」と緊急経済対策の取りまとめを指示したが、すでに表明された公共料金の支払い猶予に加え、検討されているのは5万円以上の現金給付、ポイント還元の拡大、中小企業の納税猶予などのメニューだ。
ポイント還元は高齢者に恩恵が回らず、倒産危機の中小企業に「税金は猶予する」と言われても焼け石に水だろう。
現金給付も決め手にはならない。リーマン・ショック後に当時の麻生政権は国民全員に1人1万2000円(子供と高齢者は2万円)の「定額給付金」を支給した。内閣府の検証では支給額の3割程度しか消費に回らなかったとされる。