最近日本企業でも浸透しつつあるのが、社員が友人や知人を会社に紹介・推薦する「リファラル採用」と呼ばれる制度だ。現場に精通した社員自身が採用担当となることから、人材のミスマッチが少ないといわれる。また、採用まで至った場合、紹介した社員に対しインセンティブを支払う企業も多い。
いわゆる「コネ採用」との違いは、紹介が社内の有力者、取り引き先の重役などの権力とは無関係であり、社内の誰もが紹介出来る制度だという点。そんなリファラル採用を活用して転職をした人や、導入している企業の担当者に話を聞いた。
「情報交換」を言い訳に気軽に会社訪問
30代の男性・Aさんはリファラル制度を利用し、1年ほど前に都内の金融会社に入社した。転職を積極的に考えていたわけではなかったが、勉強会を通じて出会った知人の誘いがあり、「カジュアル面談」でオフィスを訪問し、社員と交流。職場の環境や働く社員に魅力を感じ、複数回の面接を経て、転職に至った。
「リファラル採用は、選考に直結しない『カジュアル面談』から始まることが多い。情報交換という立て付けのため、敷居が低く、気楽に面談出来ました。社会人としての自分をある程度分かってくれている人の紹介なので安心感もあったし、通常の転職活動より選考も緊張感なく臨めました」
従来の採用と比較し、入社直後から活用する人が多い
20代の女性・Bさんが人事・採用担当として勤務するメディア関連企業では、中途入社の社員の約2割近くがリファラル経由で、年々その割合が増えて来ている。背景には、既存の採用手法に感じる限界があったという。
「履歴書で、“見た目”の経歴が立派な人を採用しても実際のスキルが足りなかったり、会社や組織の文化と合わなかったりすることがしばしばありました。転職エージェントからの紹介でも、こちらが望む人材はなかなかこないうえに、転職成約時に支払う成果報酬も年収の2割と割高。
それに対し、リファラル採用では、社員自らが現場に足りない人物や企業文化に合った人材を見極めるため、入社直後から活躍する人材が多い印象があります。紹介者の社員に支払うインセンティブも、転職紹介企業への仲介料に比べれば安価ですし、今後も比率を増やしていくことになりそうです」