中央政府は2月25日に方針決定、地方政府は3月1~5日に決定・実施
4月3日の人民日報によれば、個人事業会社が全国で最も多い広東省では、水産、農産物などの市場では市場管理方とテナント方が話し合い、少なくとも2、3月については、賃借料を無料にする契約を個別に交わしている。
佛山市順徳区衆冲村のウナギ養殖産業は、海外への輸出を行うなど事業規模の大きいところが多いが、そうした企業ではコロナ・ショックにより輸出が滞り、その多くが資金繰りに窮している。そこで、このような農林漁業事業者に対して中国農業銀行広東省支店は自主的に1000万元(1億5400万円、1元=15.4円で計算)までの枠でクレジットラインを設定した。3年の間、枠内であれば、自由に借りたり返したりすることができ、金利優遇も受けられる。
広東省市場監督管理局の麦教猛局長は、「国家政策の要求に照らし合わせ、広東省は、地代の減免、減税、手続き費用の引き下げ、特別信用貸出の増加など、23の具体的な措置を打ち出した」と強調しており、その結果、現状では個人事業の再開率は90%を超えているという。
注目すべき点はその実施の早さである。国務院常務会議は2月25日に行われ、これらの方針が決定されたが、各地方政府は迅速に対応し、ここで示した詳細の政策について、3月1日から5日までの間に決定し、実施に移している。
マクロでは、1月末の段階から金融安定化策が実施されており、直近では預金準備率の引き下げが決定された。財政面では5G設備やデータセンターなど、情報のデジタル化に関する新型インフラ設備を充実させたり、自動車消費を促進させる政策が打ち出されたりしている。こちらも対応は迅速だ。
日本でも、各世帯に2枚のマスクを送付したり、一部世帯に現金30万円を給付するといった経済対策の内容が話題になっている。社会経済体制の異なる日本では、中国と同じようにはできないだろうが、それでも周到なマクロ政策、セーフティーネット政策、政策決断の速さ、中央と地方がしっかりと役割分担しながら、できるところからやっていくといった柔軟さなどは参考にしたいところだ。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。