景気が落ち込むのであるから税収は減少するだろう。財政収入が減る中で、財政支出を拡大させなければならない。プライマリーバランス(基礎的財政収支)はさらに悪化し、国債の増発がさらに必要となる。緊急経済対策は後に景気を回復させ、税収を十分増やすことのできる内容でなければならない。
具体的には、財政支出は39兆5000億円だが、事業規模は108兆2000億円でGDPの約2割と発表され、リーマン・ショック時の対策を大きく上回ると喧伝された。しかし、これには、昨年12月5日に閣議決定された総合経済対策、今年2月13日、3月10日に発表された緊急対応策第1弾、第2弾が含まれる。純粋に今回の追加分だけを示すと、財政支出は29兆2000億円、事業規模は86兆4000億円である。
また、別の観点からみると、39兆5000億円の内、財政投融資が12.5兆円含まれる。真水と言われる国、地方の歳出は27兆円である。
108兆円緊急経済対策の内訳
事業規模108兆2000億円の内訳をみると、74%が雇用の維持・事業の継続、15%が強靭な経済構造の構築、8%が官民を挙げた経済活動の回復、2%が感染拡大防止策、医療提供体制の整備、治療薬の開発、1%が予備費といった内訳だ。
雇用の維持・事業の継続は、雇用調整助成金を支給し雇用を維持し、企業の資金繰りを助け、納税を猶予し、生活に困っている人を支援する対策が中心である。具体的には中小零細企業、個人事業者、生活困窮者に対する給付金、融資などである。
強靭な経済構造の構築では、中小企業によるテレワーク通信機器の導入、遠隔教育等の支援といったイノベーションを加速させるものもあるが、日本企業の海外M&A、グローバル・バリューチェーンの国内回帰の支援、自然災害からの復旧・復興の加速のための公共投資、防災・減災、国土強靭化の強力な推進のための公共投資といった従来型の対策も含まれている。
そのほか、官民を挙げた経済活動の回復としては、官民一体型の消費喚起キャンペーンの実施、住宅市場安定化対策事業(すまい給付金)、地方創生拠点整備交付金などである。