新型コロナ危機で“介護難民”の増加が懸念されている。重症化リスクのある高齢者を抱える特別養護老人ホームなど介護施設は厳戒態勢で新規の入所を制限するケースが増え、愛知、千葉、兵庫、広島などでは感染者が発生した施設が閉鎖された。ショートステイやデイサービスセンターは感染者がいなくても自治体の要請で休業に追い込まれるところもある。
介護施設の感染リスクが高まるなか、今後は「在宅介護」への備えが欠かせない。まずは、「家族で介護方針を話し合うことが大切になってくる」と、介護評論家の佐藤恒伯氏は説明する。
「老人ホームなどへの入居を前提とする場合は、施設の介護方針を確認しておくことで、本人も家族も、ある程度は安心して任せることができました。
しかし、在宅介護は、介護される人と家族、地域の医療機関や介護提供者などとも一緒に、認知症の進行や延命治療の有無など、様々な状況を想定して対応を考えておかなくてはならない。その際には、介護される人の希望だけでなく、貯蓄額など資産状況まで共有することが重要です」
介護費用は親の年金と貯蓄から捻出するのが望ましく、その範囲内でどんなケアが可能かを家族で一緒に考えることが大切なのだ。
入居一時金や毎月の利用料などが必要となる施設介護と比べて、在宅介護は費用負担を抑えられる。それでも平均して毎月5万円かかるとする調査(公益財団法人家計経済研究所・2016年)もあり、認知症の進行などがあれば、さらに費用はかさむ。家族が働きに出づらくなる“機会損失”もある。