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コロナ危機でも株価揺り戻しの謎 バブル崩壊で二番底の恐怖

米国株も日本株も「新たなバブル水準」に

 米国の2020年1~3月期の実質GDP成長率は前期比年率マイナス4.8%と、2008年10~12月期以来の大きなマイナス幅となった。5月8日に発表された米国の2020年4月分の雇用統計では、景気動向を反映するとされる非農業雇用者数が前月比2050万人も減少し、1929年の世界恐慌以降で最大の落ち込みとなった。

 失業率も、2020年3月の4.4%から4月には14.7%となり、これまで戦後最悪だった1982年11月の10.8%を大きく更新した。リーマン・ショック後の2009年10月でも米国の失業率は10.0%だったわけだから、今回のコロナ・ショックはリーマン・ショックをはるかに超える大きな衝撃を経済に与えたといって過言ではなかろう。

 しかし、雇用統計が発表された5月8日のニューヨーク・ダウ平均株価は前日比455ドルも上昇して2万4331ドルをつけた。リーマン・ショックの際のニューヨーク・ダウ平均は、2008年9月の1万1790ドルから2009年3月には6470ドルまで45%も下落した。そのため、私は今回のコロナ・ショックでは株価は半値ぐらいまで下げるだろうと予測していた。だが、実際には、2月の2万9569ドルから急落して3月には1万8218ドルへと38%下げた後、上昇に転じて5月8日には底値から34%も値上がりしたのである。

 ノーベル経済学賞を受賞したロバート・シラー教授が開発した「シラーPER(株価収益率)」が25倍を一定期間超え続けると、その後にバブルの崩壊が起きるというのがこれまでの経験則だ。シラーPER25倍はニューヨーク・ダウ平均に当てはめると2万3000ドルになるので、現在の米国の株価水準は、すでに「新たなバブル水準」に入っていると捉えられる。これは日本も同様だ。

 株式市場では、いったい何が起きているのか。一般的に株価は半年後の景気を織り込むと言われるため、投資家が半年後のV字回復を織り込んで投資を行なっているとも考えられる。だが、実際は2月の世界的なバブル崩壊で痛手を負った投資家が損失を取り戻そうと、マネーゲームに躍起になっているというのが現実ではないか。

 振り返ると、リーマン・ショックの際は中国が10年間で8000兆円にのぼる莫大な固定資本投資を行なって世界経済を回復させる役割を果たした。しかし、今回はその時のような力が中国にはない。そのため、私は今後の日本株および米国株は、二番底に向かう恐れが強いと考えている。どんなバブルも、実体経済を完全に無視することは不可能だからだ。

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