新型コロナウイルスの感染が急速に拡大し、世界中が経済的にも国民生活の面でも、非常に厳しい状況に置かれている。このように大きな災厄が生まれたことに関して、「行き過ぎたグローバル資本主義の弊害が一気に露呈した」と警鐘を鳴らすのは経済アナリストの森永卓郎氏だ。以下、森永氏が解説する。
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この30年間、世界を席巻してきたグローバル資本主義の原理は「大規模化と集中化」だった。今回のコロナ・ショックは、その弊害を一気に露呈させた。
まず、新型コロナウイルスが世界中に急激に拡大した背景を考えてみると、グローバルな人の往来が格段に増えたからに他ならない。かつてのように人々の仕事や生活の大部分が地域内で完結するような時代であれば、新型コロナウイルス感染症は中国・武漢の「風土病」で収まっていたかもしれない。
2つ目は、グローバル調達、サプライチェーンの問題だ。グローバル資本主義での大原則は、生産性を上げるために、世界で最もコストの安いところから部材を大量調達することだ。ところが、新型コロナウイルスの発生によって、そこに破綻が生じてしまった。
たとえば、日本の自動車メーカーは中国製部品の調達ができないため、国内工場の操業停止を余儀なくされた。さらに製造業にとどまらず、一部の工務店では中国製のトイレやキッチンが調達できず、顧客に住宅を引き渡せない事態に陥った。慢性的なマスク不足を招いたのも、国内需要の4分の3を海外生産に依存していたからだ。
3つ目は、グローバル資本主義が大都市一極集中を促進するということだ。世界には数多の都市があるが、国際金融センターと呼ばれる都市はニューヨークやロンドン、上海、東京など両手で数えられるほどしかない。日本では、東京圏への転入超過が24年連続して起きている。そして、新型コロナウイルス感染の大部分は、大都市で発生している。あまりに人口を集中させ過ぎたことが、被害を拡大させているのだ。