病院に行かない選択肢も
これらは保険が適用される医療用医薬品のもらい方だが、処方箋なしで医療用医薬品を買う方法もある。「零売(れいばい)薬局」の利用だ。
病院で処方される医療用医薬品は約1万5000種類とされるが、その半数の約7000種類は、処方箋がなくても零売薬局で購入できる。
零売薬局はまだ全国的に多くはないが、首都圏を中心に増えつつある。銀座薬局の代表薬剤師・長澤育弘氏が創業を手掛けたセルフケア薬局もそのひとつだ。
「零売薬局では、市販薬よりも効き目が強い咳止めや解熱剤、抗アレルギー剤など、急性疾患の症状を抑える医療用医薬品を買えます。ただし保険適用外で全額自己負担となる。また、慢性疾患の治療薬や抗生物質などは購入できません」
日常的に服用している薬を零売薬局が取り扱っていれば、急に必要になったというケースで活用できる可能性がある。
ドラッグストアでは、処方箋がいらない「要指導医薬品」(医療用医薬品から市販薬になって間もないスイッチOTCや毒薬、劇薬など)と一般用医薬品を購入できる。ただし、要指導医薬品と第1類医薬品は薬剤師の説明を受けないと購入できない。
また、ドラッグストアやネット通販では、販売価格がそれぞれ異なる。セルフメディケーション税制(*注)を利用すると、医師による診療代がかからない分、医療費を抑えることも可能だ。
【*注/年間1万2000円以上の市販薬を購入すると、確定申告することで上限8万8000円の所得控除を受けられる制度。対象となる市販薬は、解熱鎮痛剤や風邪薬、胃薬など1800以上ある】
どの薬をどこでどう手に入れるかで、薬の値段は大きく変わる。受け取り方や値段、利便性と健康への影響を考慮して、薬と長く賢く付き合っていきたい。
※週刊ポスト2020年6月5日号