3月中旬、亀井さんは生まれ育った関西の地方都市に戻り、コロナによる自粛でシャッター街となった商店の軒先を借りて、マスクを売った。商売は繁盛し「住む場所と毎日の食費に困らないくらいには稼げた」という。
「だけどそんな“特需”は1か月も続きませんでした。徐々に市場にマスクが出回りはじめ、商店街では、てんぷら屋さんまでがマスクを売るようになった。追い打ちをかけるように“アベノマスク”の配布が決まったのです」
申請が簡略化されたことで一気にラクに
もうマスクは駄目だ――そう思い知った日にたまたま目にしたのが、ネットニュース(マネーポストWEB)に掲載されていた〈コロナ失業で活用できる制度の数々〉という記事だったという。
「記事を見て、申請すればもらえる・借りられるお金があるということをはじめて知って、その日から、地元の役所通いを始めました」
4月半ばのことだった。とはいえ、最初から手続きがスムーズに行われたわけではない。
「コロナに関する融資や給付金は、“生活福祉金”にあたるため、市の社会福祉協議会が担当となる。印鑑や本人証明の書類、収入が減ったという証明の書類が必要なのはもちろん、ハローワークに求職申し込みをしていなければならないし、とにかく揃えるものが多くて大変で、これはとても自分にはできない、と諦めかけていました。でも、4月20日にガラリと景色が変わったのです」
新型コロナウイルス感染症緊急経済対策が閣議決定されたことで、ハローワークへの求職相談などの条件が緩和されたうえ、申請の方法も簡略化されたのだ。
「最大で20万円を借りられるという『緊急小口資金』は地元の役所の窓口で聞いたところ、『10万円以内なら1週間で申請が通ります』といわれ、その場で手続きしました。身分証明書や通帳などを持参して20分程度の手続きをし、ちょうど1週間で口座に10万円が振り込まれました」