感染者数増加のピークは過ぎたように見えるものの、新型コロナウイルスが猛威をふるった爪痕は大きい。感染は免れたとしても、生活の変化が全くなかったという人はいないだろう。マスクの息苦しさや慣れないテレワークに加え、2か月近く続いた「家ごもり生活」によって夫婦関係に大きくヒビが入った家庭も多い。
「“コロナ離婚”が急増しているんです」そう語るのは、夫婦問題についての相談を多く請け負う、露木行政書士事務所代表・露木幸彦さんだ。
「自粛要請に伴う自宅勤務や子供たちの休校による育児の負担の増加など、どの家庭も多かれ少なかれコロナの影響を受け、生活スタイルが変化しました。それによって、平常時には見過ごしていた配偶者の一面に気がつき、離婚に踏み切ろうとするケースが後を絶ちません。実際、2月頃から“コロナが原因で離婚したくなった”と事務所に相談に来るかたが目立ちはじめ、緊急事態宣言が延長された4月下旬にはかなり増えています」(露木さん、以下「」内同)
「コロナ離婚」はどのように起こるのか。露木さんが相談を受けた「3つの実例」を紹介しよう。
【ケース1】休校中の子供への態度で分かった夫のモラハラ気質
夫:地方銀行に勤める会社員・康宏さん(仮名・42才)、妻:専業主婦・優子さん(仮名・36才)
「結婚10年目の夫婦の事例です。8才になる息子さんの小学校は3月中旬から休校中。塾や習い事も休みになってしまい、暇を持て余していたそうです。ちょうど康宏さんの会社も3月下旬から在宅勤務に切り替わることになったので、優子さんは康宏さんに『勉強を教えてあげて欲しい』と頼んだのです。ところが康宏さんは『小学校のテストなんて誰でも満点を取れるだろ? 俺の手を煩わせるな!』と一蹴。俺は忙しいんだ、とばかりにパソコンに向かって子供の面倒なんて見ようともしなかったそうです」
これだけならまだしも、夫の暴力的な言動はさらに続く。
「在宅勤務が始まって1か月近く経った4月中旬、息子さんが所属するボーイスカウトが、広い運動公園で、間隔をとりながらジョギングする企画を立てたんです。徹底して“3密”を避けて計画されていたこともあり、息子さんは参加するのを楽しみにしていたそう。しかし、話を聞いた康宏さんは大激怒。『だいたい感染しても症状が出ない奴だっているんだぞ? 特に子どもがそうだ! うちにウイルスを持って帰ってくるつもりか!?』と言い放ったといいます。