コロナ禍は、社会や経済を変化させただけでなく、これからの日本を担う子供たちを取り巻く教育に関する、制度や環境にまで影響を与えるとする見方がある。2021年度の導入は見送りとなったが、「9月入学」への変更の議論は今後も続いていくだろう。
もし2年後に9月入学が実現されれば、2022年9月に小学校に入学する子供が約40万人も増え、卒業も半年遅れるという試算だ。一時的に保育園でも同様のことが起き、待機児童数増加が避けられない。
学校生活も様変わりする。修学旅行や林間学校などを中止する学校も出てきており、京都や東京、北海道など、過密しがちな観光地や大都市を避ける動きもある。卒業式は7~8月になり、暑くて袴などはけない。出会いと別れの象徴だった桜は、ひまわりや朝顔、キンモクセイにその座を奪われる。
一方で、コロナに伴う変化は、学業の面ではメリットも生み出している。名古屋大学大学院准教授の内田良さんは、オンライン授業はすべての子が平等に授業を受けられるようになるのが大きなメリットだと話す。
「不登校の子やいじめを受けている子でも学ぶ機会を奪われない。これまでは、いじめられている子は学校に行けず、加害者は元気に登校しているというのが実情でした。しかし、オンライン授業が一般化すれば、加害者の子を出席停止にして自宅で授業を受けさせ、被害者の子が学校に来られるようになる。
また、子供たちの安全を守ることにもつながります。台風などの自然災害や感染症の流行、学校近辺に不審者が現れたときでも、学校側が即座に“オンライン授業に切り替えます”と判断すれば、家から出ずにいつも通り勉強できる」(内田さん・以下同)