コロナ禍で、お墓や法要を取り巻く状況はどう変わったのか。著書『いまどきの納骨堂 変わりゆく供養とお墓のカタチ』(小学館)の著者であるノンフィクションライターの井上理津子さんがレポートする。
* * *
「緊急事態宣言を重く受け止め、すみやかに出入り口を閉鎖し、来館をお断りした」と、明かしてくれたのは、神奈川県内の自動搬送式納骨堂の葬祭部長だ。自動搬送式納骨堂とは、厨子が保管庫に収められ、ベルトコンベアで運ばれてきて、参拝所に元より設置された墓石にセットされる仕組みの屋内墓。寺が運営する。とりわけ首都圏で、近年急増した。
この葬祭部長が勤める納骨堂では、通常、法要は堂内に設けられた本堂などで行われる。閉門した4月中旬から、当初緊急事態宣言の期限とされた5月6日までに、約80件の法要の予約が入っていて、そのうち約30件が納骨法要だった。電話で取り消しを伝えると、皆、承諾し、トラブルは一件も起きなかったという。
「いつなら、法要の再予約をできますか?」
「緊急事態宣言の解除がいつになるか見えないので、分かりません」
「そうですね…」
「緊急事態宣言の解除後に、改めてご相談ください」
「分かりました」
概ね、そんなやりとりだったそうだ。緊急事態宣言が5月末まで延長された5月4日、さらに約50人の施主に、同様の連絡をした。
当然、納骨堂にとっては営業面で大きな痛手だ。しかし、3月30日・31日に、愛媛県松山市の葬儀会館が感染源となった例があった。「従来どおりに営業を続けて、もしうちが感染源になると、元も子もない。来館者から私たちスタッフへの感染もあり得る」との判断だった。