もっとも、門を閉じずに、細々と開館を続けてきた寺や納骨堂は数多い。「新宿瑠璃光院」(渋谷区)もその1軒で、業務統括推進本部部長の木下尚子さんは、「住職の『どのような時も、開けておくのが寺の務め』との考えから、門は開け続けています」
新宿瑠璃光院は、浄土真宗東本願寺派・光明寺(岐阜県)の東京本院。日曜礼拝、終活セミナー、坐禅など館内で行ってきたイベントをいち早く中止した上、緊急事態宣言後、予約が入っていた法要の施主に意向を尋ね、延期を促した。
その際に多かったのは、納骨法要を予約していた人からの「延期して、お骨を家に置いておいてもバチは当たりませんか?」という質問。
僧侶らが、死者は皆平等に浄土に招かれるという浄土真宗の教えを説明し、「バチは当たりません」と答えると、安堵の声が聞かれた。納骨を百箇日法要やお盆の時に延期してはどうかと提案した。
「ただし、私どものほうで、“エア法要”を行っています」と、副住職の永樂達信さん。延期もしくは中止になった法要の日、曰く「勝手に」読経しているのだという。「坊さんというのは、頼まれなくともそういうことをやりたくなるものなのです」(永樂さん)
お墓参りに訪れる人は通常時より減ったが、それでも1日に10数人はやって来ているという。さらに、「お急ぎの事情がおありなんでしょう。この時期にも、納骨堂の見学者も来られています」と木下さん。見学者には、2mほどの間隔を置いて堂内を案内し、近距離でパンフレットを見せるのを避け、教室のようにホワイトボードを使って説明しているそうだ。
※女性セブン2020年6月11日号