トランプ米大統領が中国に関する会見を29日に開催と発表したことで、米中関係の悪化懸念が再燃して28日のNYダウは3日ぶりに反落した。29日の日経平均も前日までの4連騰で値幅にして1500円超の上昇を見ていたことから利益確定売りが先行して5日ぶりに反落した。ここ継続していたバリュー株の買い戻しが一服して、時間外取引での米株価指数先物安も重石となった。ただ、大引け間際に一時プラス圏に浮上するなどして、日経平均は前日比38.42円安の21877.89円と下げ幅を縮小して大引けた。
今週の日経平均は、スピード調整によるもみあいに転じる可能性が大きい。経済活動正常化を期待した動きが先行して、日米欧ともに先週の株式市場は買い戻しが先行して、物色的には、グロースからバリューへと循環しながら、商いを伴った株高が展開された。東京市場でも需給に変化が表れている。
東証が28日に発表した5月18日から22日の投資部門別売買動向によると、海外投資家は現物取引ベースで6週ぶりに買い越しとなったほか、現物と先物の合算でも15週ぶりに買い越しに転じている。この傾向は、5月25日から29日の週も継続していることが予想でき、最大の売り手だった海外投資家の買い戻し姿勢が鮮明になったことが、ここまでの日経平均の上昇に寄与したことは確かだ。
しかし、新型コロナウイルス感染拡大の第2波への警戒感はぬぐえず、香港の国家安全法制導入が全人代で可決されたことをきっかけとした米国からの通商面を含む制裁措置、それに対する中国の報復措置という米中間の緊張が相場の懸念材料として意識されている。
また、5月28日までの日経平均4連騰で25日移動平均線からの上方乖離率が28日には7%を超えるなど、テクニカル的に高値警戒を示す指標も増加している。6月12日のメジャーSQ(特別清算指数)を控えて先物動向に影響されやすい地合いのなか警戒要因が増えていることから、日経平均は次の展開待ちのもみあいとなりそうだ。
なお、相場への影響が大きい米5月雇用統計の発表は5日の東京市場大引け後の夜であり、その影響は翌週となる。9日にはFOMC(米連邦公開市場委員会、10日まで)が予定され、この2大イベントを控えて週後半には手控えムードが強まりやすい。一方、物色的にはバリュー株の水準訂正が継続するかどうかが焦点となるが、これはニューヨーク市場の物色動向次第となりそうだ。
このほか、メジャーSQを控えて指数インパクトの大きい値がさ株は、先物主導の売買の影響を受け値動きが荒くなる可能性があることには、注意が必要だ。29日は日経平均が上げ一服となるなか、日経ジャスダック平均は29日にかけて11連騰、マザーズ指数は反発した。先物の指数売買に影響を受けにくい新興市場の個別株物色に再び投資資金が向く流れが意識されよう。
今週の主な国内経済関連スケジュールは、1日に1-3月期法人企業統計、5月自動車販売台数、2日に5月マネタリーベース、5日に4月家計調査、4月景気動向指数の発表が予定されている。
一方、米国など海外主要スケジュールでは、1日に米5月ISM製造業景況指数、米4月建設支出、3日にユーロ圏4月失業率、米5月ADP雇用統計、米5月ISM非製造業景況指数、4日に米4月貿易収支、ECB(欧州中央銀行)定例理事会、ラガルドECB総裁会見、5日に米5月雇用統計、米4月消費者信用残高、7日に中国5月貿易収支が予定されている。