企業からも重宝される
だが、コロナ後の先行きが見通せない状況に置かれたことで、Aさんのように「独立より会社に残ったほうがいい」という判断が結果的に得することになる。高齢者雇用に詳しい人事ジャーナリスト・溝上憲文氏が指摘する。
「コロナの影響で自動車など基幹産業からインバウンド関連業種など広範囲に業績が悪化しており、今後はリストラが一層増えることが予想される。とくにこの3月以降は、60代の非正規雇用の人が首切りにあうケースが増え、労働相談窓口にも高齢者が多い。
しかし、60代でも、それまで勤めていた会社で雇用延長している会社員ならば過度に心配する必要はない。高年齢者雇用安定法では、定年後に再雇用や雇用延長している社員を狙い撃ちで解雇することはできなくなっています。
企業にとっても、リストラはまず非正規を減らし、正社員を人員整理する際にも、給料が低い雇用延長中の社員より、給料の高い現役世代の社員をリストラしたほうが人件費を減らしやすい。そのため、高齢の社員は会社にしがみつきやすいといえます。
雇用情勢が好転するまでには時間がかかる。定年後の転職や起業に備えてスキルを磨いてきた人も、まずは社内で活かすことに目標を変え、今の会社に雇用延長で残り、雇用が維持されてから、その先を考えたほうがいい」
※週刊ポスト2020年6月12・19日号