コロナ後では年金の“賢い受け取り方”が大きく変わる。これまで「勝ち組」とされてきた会社に雇われないフリーランスの業務委託などの働き方は、年金も有利とされていた。
会社の再雇用で働く定年後世代は、給料と年金の合計が月28万円以上(60~64歳の場合)になると、超過額の50%が年金から減額される「在職老齢年金の支給停止」に悩まされてきた。一方、業務委託などで働けば、厚生年金に加入しないで済むので、いくら稼いでも年金はカットされない。社会保険労務士の北山茂治氏が解説する。
「定年後も再雇用などで厚生年金に加入して働いていると、将来の受給額は増えますが、年金保険料を払い続けるので、そのぶんを取り戻すには長い期間が必要だった」
北山氏の試算によれば、60~65歳の5年間、会社員として月収25万円のAさんと、業務委託で同じ収入のBさんを比べると、65歳から受け取る年金額はAさんのほうが年間約8万5000円多くなる。ただし、Aさんが5年間に支払った年金保険料の総額は142万円にのぼるため、そのぶんをAさんが取り戻して、Bさんより得するには86歳直前まで長生きしなくてはならなかった。
だからこそ再雇用は「負け組」とみられてきたが、状況は変わった。
「この試算は、社員でもフリーランスでも同じ額を稼げるという前提ですが、コロナ禍でフリーは真っ先に仕事を失うリスクがあることが明らかになった。今後は“定年後も厚生年金に加入しながら働く”という選択が有力になってくる。それを後押しする制度改正も控えています」(同前)
今国会で成立が確実となった年金改正法である。60~64歳の在職老齢年金の支給停止基準が給料と年金の合計47万円までに緩和されるのだ。
「これによって60~64歳での『働きながら年金も満額受給』が一気に実現しやすくなる。また、65歳以降に厚生年金に加入して働く場合についても、これまでは年金受給額が増える改定が退職時や70歳の時点でしかなされなかったが、政府は毎年1回改定して年金額を増やしていく『在職定時改定』を導入する方針です。保険料を多く支払った“リターン”を、早く受け取れるようになるのです」(北山氏)