「自宅での最期」を希望する人が69.2%(2018年厚労省「人生の最終段階における医療に関する意識調査」)いる一方で、実際の自宅での看取り率は13.0%(2017年の人口動態統計)だという。医療機関で亡くなる割合が73.0%なのだ。
国は「地域包括ケアシステム」の構築を進めており、病院、診療所、介護施設が連携することで、住み慣れた地域で自分らしい生活を最期まで続けられることを目指している。その一環として行われているのが「退院前カンファレンス」だ。
入院患者が在宅医療に移行する際には、必要に応じて患者本人や家族、ケアマネジャー、病院の医師や看護師、在宅医療機関が集まって情報を共有し、今後の療養生活について話し合うのだが、簡単にはいかない。
七転八倒の介護を経て91才の実の母・絢子さんを自宅で看取り、その体験を新著『いつでも母と』に綴った作家・山口恵以子さんと、絢子さんの主治医で「しろひげ在宅診療所」院長の山中光茂さんが、医療と介護について語り合った。
山中:私は退院前カンファレンスに必ず同席しますが、多くの在宅診療所からは事務員が行くことが多いようで、在宅医が来るのは珍しいと言われます。でも病院と在宅診療所の方針が異なると、家族が混乱してしまいます。ご家族が本当に在宅でいいのか、まだ悩んでいることもある。
病院の医師が親切心で「通院しながらまだ治療できますよ」「困ったらいつでも戻っておいで」と言うこともあり、気持ちが揺らぎやすいんです。その患者さんの「揺らぎ」に寄り添うためにも在宅医として立ち会うべきだと考えています。