親の衰えが進むと、介護のために仕事を辞める選択をする人も少なくない。その先には、どんな現実があるのだろうか。都内在住の女性・Aさん(48才)は、ため息まじりに話す。
「夫婦ともにフルタイムで働いていたので、同居している夫の母親の介護のため、平日はヘルパーさんに来てもらっていました。ですが、あるときからトイレの場所すらわからなくなり、夫と話し合って、私は在宅勤務が可能な仕事に転職しました。『これでヘルパーさんのいない時間も安心だ』と思っていたのですが、そのとたん『訪問介護サービスの一部を打ち切る』と告げられてしまったのです」
訪問介護員(ホームヘルパー)の業務は、利用者の体に触れる「身体介護」と、部屋の掃除や調理、洗濯などの「生活援助」の2つに大別できる。ケアタウン総合研究所代表の高室成幸さんはこう語る。
「介護保険制度にルールがあり、『生活援助』のサービスは日中に同居する家族がいる場合、原則として受けられないことになっています。これは“介護離職”してしまってから気づく人も多いんです」
施設に入れる金銭的余裕もなく、親ひとり、子ひとりで在宅介護を行う親子の間では、親の容体が悪化するとともに子供が仕事に行けなくなるケースもある。親の年金を命綱に自宅で介護を続けるが、いくら在宅介護が安上がりとはいえ、家賃と2人分の生活費を支払い続けるのは厳しい。さらに、介護につきっきりになるほど、新たな職につく機会は失われる。介護離職は、こういった負の連鎖につながる恐れもあるのだ。
介護保険の支給上限を超えてしまったというケースもある。埼玉県の女性・Bさん(50才)が明かす。
「81才の父は要介護3。先月は私が体調を崩したこともあり、ヘルパーさんにいつも以上にお世話になりました。支給上限の27万円を使い切った後も、平日昼間の1時間だけヘルパーさんに来てもらって、父の面倒を見てもらいました」