自宅にいながら病気の治療を受けたり、年老いた親の面倒をみたい。そして最後は、住み慣れたわが家で家族に看取られたい──そう望む声は多い。厚労省「人生の最終段階における医療に関する意識調査」(平成30年3月)によると、「最期を迎えたい場所」への回答では、「自宅」が69.2%と圧倒的に多かった。2位の「医療機関」は18.8%だ。
そこで注目されるのが「在宅医療」だが、同じ在宅医療でも2通りの方法がある。「訪問診療」と「往診」だ。それぞれの目的が異なることを知っておきたい。
ゆみのハートクリニックの田中宏和院長が解説する。
「在宅診療の体制が整った医療機関の医療従事者が患者宅などを計画的に定期訪問するのが『訪問診療』で、通常は月2回(患者により異なる)の訪問と24時間365日体制の対応がセットです。
一方の『往診』は計画的なものではなく、急にお腹が痛くなるなど、その都度の患者の求めに応じて、患者宅を訪問します」
訪問診療と往診はかかるお金も変わる。基本的な値段は医療行為を点数にした「診療報酬点数」(1点10円で計算)で定められている。主な内訳は別掲の図に整理した。高崎健康福祉大の木村憲洋准教授が解説する。
「月2回、患者の住む自宅を訪問診療する場合、『在宅時医学総合管理料』4万1000円が加算されます。これは患者数や訪問頻度、訪問する場所などによって異なります。
さらに『在宅患者訪問診療料』8880円が2回分加わり、合計5万8760円(3割負担で1万7630円)になります。実際はこの額に、患者の状態により異なる『在宅療養指導管理料』や、看護師が訪問する『在宅患者訪問看護・指導料』などが積み上がります」