自宅にいながら病気の治療を受けたり、年老いた親の面倒をみたい。そして最後は、住み慣れたわが家で家族に看取られたい──そう望む声は多い。
厚労省「人生の最終段階における医療に関する意識調査」(平成30年3月)によると、「最期を迎えたい場所」への回答では、「自宅」が69.2%、以下「医療機関」が18.8%、「無回答」が10.5%、「介護施設」が1.4%と続く。
さらに、最近は新型コロナの院内感染が相次いだことにより、「病院に行くのは危ない」という認識が広がり、通院を避ける人が増加している。そこで注目されるのが、「在宅医療」だ。
「外来」で受ける治療は「在宅」でもほとんど可能
中村診療所所長で在宅医療を担う内科医の中村洋一氏が言う。
「外来、入院に続く、“第三の医療現場”として制度化されたのが在宅医療です。超高齢化が進むなか、疾患により通院が困難になった方を主な対象にした医療で、自宅にいながら医療サービスを受けられます。現在は自宅療養や自宅での看取りを望む患者の増加とともに、在宅で受けられる医療の内容が多様化しています」
どういうものが含まれるのか。往診カバンを抱えた医師が自宅を訪問する治療は“必要最低限の処置”というイメージがあるが、実は幅広い(別掲表参照)。表の例はあくまで一部で、外科治療から眼科まで外来受診とほぼ同等の治療を受けられる。ゆみのハートクリニックの田中宏和院長が解説する。
「現状の在宅医療では、大規模な装置が必要なCTやMRI検査こそ無理ですが、人工呼吸器の管理やインスリン注射、エコー検査やレントゲン撮影など、一般病院に通院・入院した場合とほぼ同じ治療や検査を受けられます。口から栄養補給できない場合の点滴や痛みをコントロールする神経ブロック注射など、緩和ケアの処置も可能です」