「生活が苦しい」と悩むお金持ちたち
まず、年収1000万円世帯の家計を覗いてみよう。能勢さんが解説する。
「月々の額面は約85万円、そこから所得税、住民税、社会保険料が控除され、手取りが62万円程度となります。固定費として大きいのが家賃。年収1000万円世帯はハードワークのため、便利な都心のタワーマンションに住むことが多い。すると、家賃が月々20万円はかかります」
タワーマンションに住むような家庭は周囲の視線を気にして「それなりの生活」を送ることを余儀なくされるという。すると、車のローンと駐車場代、ガソリン代で月15万円程度、仕事仲間やママ友との交際費、洋服代に10万円以上かかり、家族との外食代や旅行代と次々に出費が積み重なる。
「そこへ子供の教育費がのしかかる。年収1000万円世帯は所得制限によって児童手当は満額給付の半分の年間6万円となり、『高校無償化』も対象外となることがある。生活レベルが上がる一方で国からの補助は減り、貯金や投資に回すお金は意外と残りません」(能勢さん)
政府の調査「家計の金融行動に関する世論調査(二人以上世帯調査)令和元年」でも、年収1000万円以上1200万円未満の世帯の16%が「貯蓄をしなかった」と回答している。『月10万円で より豊かに暮らす ミニマリスト生活』(クロスメディア・パブリッシング)著者で、YouTuberとして活動するミニマリストタケルさんは「高収入が必ずしも幸せとは限らない」と話す。
「YouTubeの企画で、高収入の人たちにも出会ってきましたが、『生活が苦しい』と話す人は少なくありませんでした。物欲というのは際限がないので、収入とともに消費も増えます。やがて、『もっと稼がなくては』という強迫観念が生まれると、苦しさしか残りません」