手取り20万円の方が「幸福感」を得やすい
お金を稼ぐ苦しさは、低収入の家庭でも変わらないはずだが、平均年収より少ない「年収300万円世帯」においては、生活はさほど困難ではないという。能勢さんが続ける。
「額面は月25万円なので手取りは20万円程度。そうなると、職場から多少離れていても、家賃は10万円以下程度の安いところを選びます。当然、車は持たず、外食も会食もコスパ優先で月2万円もかからない。児童手当は満額受け取れますから、結局、日々の生活費に使えるお金は年収1000万円の家庭と大して変わらないんです」
毎日の食費、光熱費、携帯料金などの生活費は、節約の腕の見せどころ。ファイナンシャルプランナーの花輪陽子さんは、「金銭感覚は、年収300万円の人の方が健全なことが多い」と指摘する。
「年収1000万円の家庭では、使途不明な出費が非常に目立つ傾向がありますが、年収の少ない家庭は“危機感”が常にあるため、お金の流れをしっかり把握している人が多い。特に、食費に明らかな差が出ます」
忙しい年収1000万円世帯では、家族そろっての食事といえば外食が当たり前で、「たまのぜいたく」が高級レストランになるパターンが増えるという。一方、年収300万円世帯は節約が身についているため、自炊はもちろん、飲み物も水筒に入れて持ち歩くなどの心がけを忘れない。
「ぜいたくは頻繁になるほど麻痺して、幸福度が下がります。月1回程度のイベントなら、近所のファミレスでも充分満足できます」(花輪さん・以下同)
現代は工夫しだいでいくらでも出費を切り詰められる。たとえば運動なら、ジムに通わなくてもインターネットで動画を見ながら自宅でトレーニングが可能だ。子供の習い事も、自治体が無料で開いているカルチャースクールに通わせたっていい。
「光熱費や携帯電話料金は生活スタイルに合わせて契約会社を乗り換えれば安上がりになります。たくさん買い物をするときは、郊外のホームセンターやディスカウントスーパーへ行った方が割安になる。収入の低い家庭は、そういった情報収集がうまい」
日本は長くデフレ経済が続いた。生活必需品は100円ショップでだいたい手に入り、ファストフードやファミレスも品質は上がりつつ低価格化が進む。家計が“低予算”でも、充分に裕福な生活を送れる「新型リッチ」が次々に生まれている。