新型コロナウイルス感染対策として「3密」の象徴とやり玉に挙げられ続けた娯楽施設が、「パチンコ店」だ。
口火を切ったのは、大阪府の吉村洋文知事。休業要請の対象にもかかわらず営業を続けるパチンコ店について、吉村知事は再三注意喚起を行ない、4月24日には6店舗の名前を公表した。
東京都の小池百合子知事も同様に、5月9日に休業要請に応じないパチンコ店15店舗の名前と住所を都のホームページで公表。ワイドショーが営業を続けるパチンコ店を生中継し、「営業をやめさせろ」という自治体への通報も殺到した。結果、多くのパチンコ店は「強制自粛」に追い込まれた。
だが、フタを開けてみればパチンコ店でクラスターが発生した事例はなく、感染経路がパチンコ店というケースも報告されていない。独ベルンハルトノホト熱帯医学研究所勤務の村中璃子医師が指摘する。
「日本人は3密にとらわれがちですが、密集した空間でも『発声』がなければ感染が広がりにくいことは世界的にも明らかになってきている。声を発する機会がほとんどないパチンコ店は、マスクを着ければ感染リスクは少ないと言えます」
喫煙者を想定した店内は換気も徹底されており、建築基準法上、パチンコ店は店舗面積によって1時間に6~10回室内の空気を入れ替えることが義務づけられている。松永クリニック小児科・小児外科院長の松永正訓医師はこう語る。
「黙っている環境では感染が広がらないことは分かっていた。感染拡大を防止するという科学的観点を大きく飛び越えて、単に“イメージ”でパチンコ店が標的にされていたように感じます」
※週刊ポスト2020年7月31日・8月7日号