新型コロナウイルスの感染拡大で1年延期が決まった東京五輪。さらには目下、開催都市の東京で感染者が再び急増している。本当に1年後、世界中からアスリートと観客を集めて開催できるのか。不透明な先行きに、アスリートたちのみならず、様々な影響が出始めている。
東京五輪後の選手村を活用するマンション「HARUMI FLAG」(以下、晴海フラッグ)は、2019年7月に販売を開始した。
しかし4145戸のうち940戸を売り出した時点で五輪延期が決定。現在は販売を中止している。購入者は契約の白紙撤回も可能となった。
本来は2023年3月だった入居開始時期はいつになるのか。幹事会社の三井不動産レジデンシャルによれば「新たな入居時期はお伝えできない」という。都内不動産業者が言う。
「晴海フラッグの最大の魅力は周辺の物件と比べて坪単価で3~4割は割安であること。たとえ五輪が中止でも、それだけで大きく人気は下がらないでしょう。ただし、五輪がさらにもう1年延期となれば、引き渡し時期が2025年以降になる場合もある。早めに中止が決まったほうが傷が浅いという声もある」
さらに悩ましいのが「アクセス」の問題だ。以前から晴海フラッグは、最寄りの都営大江戸線勝どき駅まで徒歩17~20分程度かかることがネックとされてきた。5月24日からは晴海フラッグと新橋、虎ノ門を結ぶ「バス高速輸送システム(BRT)」のプレ運行が始まる予定だったが、感染拡大のため見合わせ。運行開始のメドが立っていない。住宅コンサルタントの寺岡孝氏が言う。
「交通の便がどうなるかハッキリしないのは大きなマイナス要因です。コロナで業績が下がっている企業が多く、サラリーマンはローンを組むことに慎重になっている。在宅ワークの浸透で都心に住む必要性が減っていることもあり、晴海フラッグが販売再開後に順調に売れていくかどうかは不透明です」