7月に入り上海総合指数の値動きが激しい。年初来安値(終値ベース)は3月23日に記録した2660ポイントだが、その後しっかりとした上昇トレンドが出た。6月30日の終値は2985ポイントを付け、この間の上昇率は12%となった。それが7月1日以降急騰、僅か7営業日後である9日には3451ポイントに達し、16%上昇した。しかし、3営業日ほどの高値圏でのもみ合いを経て15日から急落、20日は持ち直し、終値は3314.15ポイントで引けている。
こうした値動きの背景に何があったのか? 当局による投機防止策が効いているようだ。
中国証券監督管理委員会(証監会)は7月8日夜、258社の違法な場外配資を行う機関の名簿を公表した。株式市場の規範を守り、理性的な発展を促すためだとしている。
場外配資とは、信用取引制度の枠の外で、金融機関が投資家に投資資金を貸し出す行為である。当局はリスク防止のためのレバレッジ規制をかけているのだが、それを無視して貸し出す業者が続出、その取り締まりを強化したのである。その後、当局の監督管理は厳しくなり、意を受けたであろうマスコミによる違法な場外配資への強い非難もあり、投機が収まり、売買代金は減少し、上海総合指数は下落した。
この顛末には、大きな政治的背景がある。それは米中関係の緊迫化である。
全人代常務委員会は6月30日、香港国家安全維持法草案を可決、即日発効した。これによって、中国の政治的安定は高まることになる。アメリカ対中強硬派としては、ここは反撃したいところだろう。
米中貿易摩擦においては輸出産業が攻撃対象となったが、アメリカ対中強硬派の真の攻撃目標はファーウェイ(華為技術)や、ハイクビジョン、アイフライテック(科大訊飛)など、通信、AI、監視カメラ、ネットセキュリティなどに代表される中国の競争力のある先端ハイテク企業である。中国の台頭を抑えるためには、これらの企業の成長を抑える必要がある。トランプ政権は中国の先端ハイテク企業の対米投資、輸出を制限したり、彼らへの輸出を制限しようとしている。
さらに、NASDAQを中心にアメリカの証券市場からそうした先端ハイテク企業を排除し、資金調達の面からも中国企業の発展を阻害しようとしている。