今年2月に野村克也さん(享年84)が亡くなってから、もう半年が経とうとしている。選手・監督のほか解説者としても活躍し、生涯で約50億円を稼いだといわれている。2017年に急逝した妻・沙知代さん(享年84)も相当な金額を遺していたとみられる。死後10か月までの相続期限(それを越えると延滞税がかかる)が迫るなか、遺産の行方に注目が集まるが、複雑な家族構成ゆえ相続も一筋縄ではいかないと見られる。
野村さんの場合、沙知代さんとの間の実子(野村克則氏・47)にくわえ、すでに養子縁組している沙知代さんの連れ子が2人(団野村氏・63、ケニー野村氏・61)、さらに前妻の子が1人おり、血縁や立場、親との関係性が異なる4人の子供が相続人となる。
こうした複雑な家庭では、もっとも親と近い存在にいた人物が多くの情報を持っていることが多く、その他の人物が相続財産の細部を把握しないまま相続に臨むケースも少なくない。また、絶縁状態になっていた人物が突然やってくることもあるわけで、そうなると親孝行をしていた側が複雑な感情を抱き“争続”になってしまうこともあり得る。
そうしたトラブルを回避するためには、生前から対策を打つ必要がある。「大切なのは遺言書を作成するだけでなく、作ったことを相続人に共有しておくことです」と相続実務士の曽根恵子さんは解説する。
「遺産相続の平等性の確保のため、最低限の取り分である『遺留分』を計算したうえで、どの程度まで疎遠な子の権利を認めるかを話し合いながら、確実に効果を発揮できるように公正証書遺言を残すべきでしょう」
しかし親が面倒がって、進んで“終活”をしない場合もあるだろう。
「そのような場合は、子が主体となって対策する必要があります。親の生前から、相続の候補となる人に連絡を取れる手段を確保しておき、『トラブル回避のために、きちんと遺留分を考慮して遺言書を書いておいてほしい』と親にお願いすることも大切です」(前出・曽根さん)