野村家の相続の難しさのひとつに、夫妻がわずか3年のうちに相次いで亡くなったことも挙げられる。法律では、配偶者には遺産の2分の1の相続権が認められている。沙知代さんが亡くなったとき、野村さんが遺産の半分を相続したのだろうか。
「配偶者への相続は1億6000万円まで非課税なので、沙知代さんから野村さんへの相続分を増やした方が一見、おトクのように思えます。しかし、その野村さんが亡くなれば、さらに子供への『二次相続』が発生します。その際は税の優遇措置はないので、2回の相続で多額の相続税がかかる可能性があるのです」(前出・曽根さん)
野村家の場合、それを避けるため沙知代さんが亡くなった時点で手を打つべきだった。
「沙知代さんの遺産を、野村さんが相続をしないという選択肢がありました。二次相続を想定して主な財産は子供たちだけに相続させる方が賢明といえるでしょう。資産がある人ほど、生前にきちんと道筋をつけておくべきです」(前出・曽根さん)
野村家の事例を教訓に、いますぐにでも親子で準備を進めておきたい。
※女性セブン2020年8月13日号