「親が生きているうちはトラブルに発展しづらいのですが、両親が亡くなって兄弟姉妹だけになったときに揉めやすい。ちなみに、兄弟姉妹の数が多いからトラブルになるのではなく、2人兄弟でも揉めるケースが目立ちます」(前出・曽根氏)
どういった理由でトラブルが起こるのか。
「分割しづらい遺産ほど揉めやすくなります。最も分けづらいのは不動産で、例えば長男が実家に住んでいると遺産を分割できず、『兄が遺産を独り占めしている』と長女や次男が反発してトラブルになります」(前出・曽根氏)
預金を孫に生前贈与も不公平感を生みやすい。
「親が孫に毎年贈与する『暦年贈与』をしている場合、『ウチは子供1人なのに姉夫婦は3人も贈与されてズルい』と憤り、相続時に多額の金額を要求して揉めることが多い」(前出・曽根氏)
現代の家族には様々なかたちがあり、単身者や子がいない夫婦なども珍しくない。多様化により、“揉め事の火種”が増えているというわけだ。
法改正により、新しい家族像に対応する新ルールが2022年までに整うが、「それゆえにトラブルが多発する可能性がある」と曽根氏は予測する。
「昨年、施行されたルールで相続人以外の親族にも遺産の権利が認められ、長年義父を介護していた“長男の配偶者”などが相続人に財産分与を請求できるようになりました。今後は、そうしたケースがトラブルの火種になる可能性があります」
今年7月には、自筆証書遺言が法務局で保管してもらえるようになった。とはいえ、相続トラブルが生じるのは、「日頃のコミュニケーション不足」が原因だと曽根氏は指摘する。
「親族間でコミュニケーションが取れていないと遺産分割時にそれぞれの主張が対立したり、勝手に話を進める人がいたりして揉めやすい。そのため、家族で話し合って親が生きているうちに財産をオープンにしておくことが重要です」
※週刊ポスト2020年8月14・21日号