かつての日本には「名経営者」と呼ばれる人物が多数存在した。未知のウイルスが、日本経済を支える大企業をも弱らせている中、昭和の経営者たちが現在の「窮地の有名企業」を任されたとしたら、どんな打開策を巡らすだろうか。ここでは、経済アナリストの森永卓郎氏が、「いきなり!ステーキの社長が堤清二氏だったらどうするか」考えてみた。
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「いきなり!ステーキ」(以下、いきなり)は、リーズナブルな価格でステーキを食べられるというコンセプトが大ヒットし、一時ブームになりました。その勢いに乗じて店舗を一気に拡大したが、プレミアム感が薄れ、競合他社の参入を招いて経営に行き詰まったとされます。
「いきなり」を運営するペッパーフードサービスは、「いきなり!ステーキ」と「ペッパーランチ」の国内114店舗の閉鎖と、8月末までに200人の希望退職者を募ると発表しました。
しかし、行き詰まった本当の理由は、「お客に飽きられた」こと。業態、サービスが人々のライフスタイルに定着するまで浸透させられなかったのが原因でしょう。
ライフスタイルに定着させるには「ストーリー」が必要です。たとえば、スターバックスの場合、確かにコーヒーは美味しいが、「スタバに通うことはおしゃれだ」とするストーリーまで生み出したことが成功の要因でしょう。
ディズニーランドはまさにストーリーの塊で、「ミッキーの中に人は入っていない」といったストーリーにお客が共感し、共有することで成り立っていて、そうした一つ一つが積み重なって“神話”の域にまで達している。
「いきなり」にどんなストーリーを載せられるかは私にはわからないが、それができるとしたら、西武百貨店の元社長でセゾングループを作った堤清二氏だと思います。