出口:Googleで働く人から聞いたのですが、同社では就職希望者のエントリーシートで年齢や性別、国籍はマストではないのだそうです。その3つは、書いても書かなくても個人の自由。その代わり「今、何をやっているか」が見られるのだと。
坂東:ほぉ。その人が「過去に何をやったか」ではなくて。
出口:まずは今の仕事です。その次は過去。その次に、「Googleでこれから何をしたいのか」。でもよく考えたら、これで充分ですよね。大前提として年齢、性別、顔写真などは採用にバイアスがかかるから不要なのだと聞いた。同社は採用ひとつでもここまで考えて「人」を大事にしているから伸びるのでしょうね。
坂東:それこそ、ひと昔前は女性だからという理由で門前払いをくらって人材の半分を活用していませんでしたが、今は男性でも60才以上はお断りというのは実にもったいない。
出口:65才以上の人口が28.4%ですから、60才以上と考えると3割以上のマーケットを捨てていることになります。ぼくは還暦で起業して古希で学長になりました。何かを決断する際に年齢を意識したことは一度もありません。諸外国を見ても、ほとんどの国に定年はない。一生働くことは動物として自然なことだと思います。
今の日本では還暦を過ぎると、たいていの場合は、雇用から外されるわけですが、日本の男性は戦後の製造業の工場モデルに過剰適応して「男は外で仕事、女は家で家事」という性分業に慣れすぎていて、仕事がなくなった途端に家でやることがなくなってしまう。
先日、パネルディスカッションをした時に「テレワークで子供と昼食や夕食をする機会が増えたら、社内の付き合いで上司のぐだぐだ話を聞いているよりも楽しいことがよくわかりました。ステイホームはいいものだなと思いましたが、実は昼間に家にいても居場所がありません」という声があがったのです。そこでパネリストの女性が行ったアドバイスが面白くて、「家を職場と考えればいいのです」というのです。
坂東:なるほど、家庭も職場だと。
出口:あなたは家では家事も育児も介護も知らない新入社員です。パートナーが社長です。職場であれば、新入社員のあなたが仕事をしなければ居場所がないのは当然のこと。社長に礼を尽くして教えを請えば、すぐに解決しますと。
坂東:一理ありますね。ただ、現実には「子供とも触れ合えて在宅ワークも悪くないよな」なんてのんきな男性が多数派で、専業主婦を中心に女性の多くが「夫が朝から晩まで家にいるのは大変、こりごり!」って。
出口:亭主は元気で留守がいい(笑い)。
坂東:流行語にもなりましたね。日本の夫婦は職場と家庭でソーシャルディスタンスが保たれていれば円満ですが、その距離を失うと、とかく摩擦で夫婦仲が不和になってしまう。一因は夫が家事をしないからです。