出口:お互いが元気なうちはいいけれど、年齢を重ねれば病気のリスクも高まります。妻に先立たれる場合もあるわけで、そこで夫が何も家事ができなければ悲惨です。その意味では、女性の方がはるかにこの高齢社会を生きやすいと感じます。
坂東:そうですね。私は幼い頃からずっと「あぁ、男の子に生まれればよかったのに。家の手伝いをしなければいけない女の子はなんて損なんだろう」と思っていました。男の子は勉強だけしなさいと母親に支えられて勉強に集中している。彼らが身軽に100mを全力疾走するのに、こっちは20kgほどの荷物を背負ってよたよた同じ距離を走るようなものだわと。でも、おかげでこの私でさえライフスキルが身について、一応生活できる。女性はいろいろなことをしながら勉強もする、仕事もするという癖がついているんです。
出口:そこで女性は優しいから、夫ができなければ私が食事を作ってあげようと考えてしまうかもしれませんが、その考えは捨ててしまっていいと思います。夫を突き放してかまわない。だって職場では自分で食事を工面しているでしょう、と。
「私は自分の食事を作りますが、あなたも普段通りご自分でどうぞ」でいいんじゃないでしょうか。夫に頼まれたら「今日のAランチは950円です」などと遊んじゃうとかね(笑い)。男性にも生きる上でライフスキルは必要ですから。
【プロフィール】
◆ばんどう・まりこ/昭和女子大学理事長・総長。1946年生まれ。東京大学を卒業後、1969年に総理府に入省。1998年に女性初の総領事(豪州・ブリスベン)に。2001年に内閣府初代男女共同参画局長を務め退官。2004年に昭和女子大学教授、2007年に同大学学長、2014年から理事長、2016年より現職。
◆でぐち・はるあき/立命館アジア太平洋大学(APU)学長。1948年生まれ。京都大学を卒業後、1972年に日本生命保険相互会社に入社。ロンドン現地法人社長などを経て2006年に退職し、同年ネットライフ企画(後のライフネット生命保険)株式会社を設立。社長、会長を10年務めたのち、2018年より現職。
※女性セブン2020年8月20・27日号