超高齢社会を突如襲った新型コロナウイルス。暗澹たる気持ちで、心が押しつぶされそうになっている人も多いのではないか。『還暦からの底力 歴史・人・旅に学ぶ生き方』(講談社現代新書)の著者で、立命館アジア太平洋大学(APU)学長の出口治明さん(72才)と、『70才のたしなみ』(小学館)の著者で、昭和女子大学理事長・総長の坂東眞理子さん(74才)が、いかにして人生を豊かにするかについて語った。
坂東:歳をとったら「キョウヨウ(今日は用がある)」「キョウイク(今日は行くところがある)」を自分から作ることが大事だと言っているのですが、コロナ禍で高齢者はおとなしくしていなければと過度に自粛しているのが残念です。きちんと予防策を講じて散歩に出ましょう、美術館に行きましょうと、背中を押したいのですが。
出口:自分の頭で考える癖をつけることが大切だと思いますね。ワイドショーなどで不安を煽られ、巷の噂を鵜呑みにしたら外へ出ることが憚られるかもしれません。でもニューノーマルを守って場所を選べば、それほど神経質になることもないと思うので、できるだけ外へ出て刺激を受けるべき。「人・本・旅」が人生を豊かにするのですから。
坂東:ひとつの基準に沿わせる“自粛警察”は行きすぎの気もします。
出口:自分の価値基準が絶対という思想は偏りがありますね。価値観とは本来、多様性があるものです。
坂東:人生を充実させるためにも「人は人、自分は自分」と考え、他人に惑わされることなく、コロナだからこそ意識して上機嫌に振る舞って自分の意志で自分を元気づけるようにしたいものです。