地下水の汲み上げで地盤が沈下
さらに、東京湾で3m以上の津波が発生した場合、沿岸部の工場などを押し流すことも考えられる。津波の影響は、地域の7割が「ゼロメートル地帯」と呼ばれる低地で占められている江戸川区も心配される。
「土地の高さを表す『標高』は東京湾の平均海面を基準として高低差を計測していますが、これほど下町が低い土地になったのはもともとの地形条件だけではありません。いまは規制されていますが、昭和半ばまで行われた過剰な地下水の汲み上げも影響しています」(若松さん)
東京都環境局の資料によると、江戸川区西葛西は1968年に年間沈下量23.89cmを記録、江東区南砂2丁目にいたっては1918年からの約60年間で4m50cmもの累積沈下量を記録している。巨大地震に耐えるための対策として、都を挙げて堤防の強化や耐震化工事が進められているが、油断は禁物だ。
昭和半ばまで農業と漁業を中心とした田園地帯だった葛西は、湿地帯を埋め立てて造成された軟弱な土地のため激しい揺れが予想される。葛西沖開発によりできた江戸川南部一帯の液状化リスクにも注意したい。