近い将来、「首都直下地震」が起きる可能性が高いといわれていたが、いま全国各地で地震が頻発している。いつ来てもおかしくない大地震直撃に向けて、今からしっかりと備えておく必要がある。あなたや家族の家、学校、職場は安全な地域にあるのか、それとも、特別な備えが必要な場所なのか──。オリジナルハザードマップを参考に、巨大地震から命を守る対策を考えてほしい。今回は、東京都目黒区・世田谷区・品川区・大田区の詳細な「ハザードマップ」をお届けする。
地盤の軟弱な場所が人気の住宅地となった経緯
23区で最も人口が多い世田谷区は、台地の表面が「洪積層(こうせきそう)」と呼ばれる地層で覆われており、比較的強固な地盤である。しかし、「谷」が点在することを忘れてはいけない。関東学院大学工学部総合研究所の若松加寿江さんはこう語る。
「地震に強い地区ではありますが、谷筋には『腐植土』が堆積しているポイントもあります」
水は高いところから低いところへ流れる。その過程で、台地に降った雨が谷に集まり、徐々に地盤を軟弱にしていったと考えられる。
その腐植土層は、自由が丘駅や尾山台駅、用賀駅など「セレブの街」と呼ばれる人気スポット周辺からも見つかっている。そもそも、鉄道や幹線道路を開通する際は、水田などとして利用されていた「人が住みにくい土地」を盛土して建設するのが一般的だった。だが、都市開発が進むにつれ、利便性から駅近辺に住みたがる人が増加し、結果、地盤の軟弱な場所が人気の住宅地となった経緯がある。
東京には608地点の湧水地点がある。谷地形の部分には湧き水がたまりやすく、水はけの悪さから地盤が軟弱になりやすい。品川区の「洗足池」も台地の崖から染み出た湧き水がたまったものである(地図内「B」参照)。
暗渠化されているため気づきにくいが、「旧・呑川」と「旧・九品仏川」は緑が丘駅付近で合流している(地図内「C」参照)。それらの川が流れる「緑が丘」や「自由が丘」は地名に反して谷地形であり、揺れやすい。
現在は直線的に流れる多摩川だが、かつては大きく蛇行していた。「二子」「等々力」「野毛」など世田谷区と神奈川県で同じ地名があるのは、本来、1つだった地域が、多摩川の流路が工事などで変わったで分断されたためだ(地図内「D」参照)。旧河道の上は揺れの激しさや液状化リスクの大きさがひときわ心配される。