過去には毎年「長者番付」に名を連ね、不動産を多数保持していた彼女は、今日まで独身を貫いてきた。そんな彼女は遺言書に何を書こうというのだろうか。
「実は黒柳さんは2017年頃から少しずつ終活を始めています。多くの不動産を整理し、厳選した数軒を所有していたのですが、1~2年前からその残りの数軒も売却しています。都内の一等地の物件ばかりなので、総額で10億円はくだらないのではないでしょうか」(前出・黒柳の知人)
相続実務士の曽根惠子さんによれば、生前に不動産を売却することは、こんなメリットがあるという。
「不動産を売却して現金にしておくと、相続税は高くなるデメリットはありますが、“扱いやすい資産になる”というメリットがあります。高齢になると、不動産の契約更新や売却など、複雑な手続きが難しくなる。もし認知症になったら、そうした契約手続き自体ができなくなるかもしれない。そのため、認知症対策として、不動産を売却して現金にしておく人もいます」(曽根さん)
また、複数の相続人がいる場合、不動産のままより、現金化されている方が分配しやすい。
「黒柳さんも相続や遺産分割のことを考え、元気なうちに現金化しておいたという可能性もあります」(曽根さん)
配偶者や子供がいないと、渡したい相手に相続できる
一般的に、遺産は配偶者と子供が法定相続人になるが、黒柳はどちらもいないため、遺産は3人のきょうだいが相続するのが普通だ。
「亡くなったときに黒柳さんの3人のきょうだいが存命なら、彼らが遺産を相続することになります。ただし、きょうだいも高齢なので、事前に準備が必要でしょう。相続人が高齢の場合、そのかたが相続後すぐにお亡くなりになり、再び相続が発生する“二次相続”の問題があります。相続税が二重にかかってしまうのを避けるため、遺言書を書いておいて、財産を甥や姪に遺贈するケースもあります」(曽根さん)
複雑なのは遺言書によって、会社関係者やお世話になった人など「きょうだい以外の人」に遺産を相続させることも可能だという点だ。黒柳には田川さんをはじめ、支えてくれている人がいる。また黒柳が行っている社会福祉活動の継続など、彼女の意志を受け継ぐ活動のために、お金を残しておくことも考えられる。