企業概要
スクロール(8005)は、生協組合員向け通販事業を主力とする通販会社です。
カタログ通販からスタートした企業ですが、M&Aによって多角化を進め、現在では、インターネット販売を行うeコマース事業、オリジナルブランド化粧品や健康食品の販売を行う健粧品事業、通販事業者向けの物流代行やシステムサポートなどを提供するソリューション事業などを展開しています。
主力の通販事業は、全国に800万世帯の組合員を持つ生協組合を販売チャネルとしています。
生協の利用者にはITリテラシーの低い高齢者も多く、紙ベースでのカタログはそうした層にとっては強い味方となっていることでしょう。今年に入ってからは新型コロナウイルスが感染拡大したことで、生協の配送サービスは申し込みが殺到するという状況となりました。これを機に同社の顧客基盤も急拡大したと予想されます。
また、紙ベースでのカタログ閲覧でショッピングを楽しむ人にとって、毎週届くカタログは日常の楽しみになっていることも少なくないと思います。
注目ポイント
EC市場が巨大化し、ECモールでのショッピングが当たり前となる中、ITリテラシーの低い層は取り残されていく一方です。そのような環境下では逆に、紙のカタログはより魅力的となります。
同社のカタログ通販が廃れず安定収益を生み出しているのは、生協という日用品・食料品を買い付けるチャネルとの親和性が高いからだと思います。日常的な買い物は、スーパーで商品を見る如く、ザーッと目を通せるチラシや広告が選びやすいものです。買う予定ではなかったけれど、お買い得品があった、珍しい商品を見つけた、なども買い物のだいご味です。そうしてリアルの買い物に近づけることができる生協のカタログ通販に、同社のカタログが同梱されているというわけで、自然と組合員の目に入るというわけです。
同社にとって、生協組合員は間接的な顧客基盤とする見方もありますが、生協とは50年近い取引関係があり、安定した事業基盤となっています。
足元の業績はコロナ特需もあり、想定以上の伸びとなっています。しかし注目したいのは、何より従前から進めてきたコスト管理が実を結んできているところ。前期においても、2%の増収にとどまったにもかかわらず、利益面では売上原価の低減や販促費のコントロールが効いて26%の営業増益を達成し、今期はさらに倍増しています
同社は、ソリューション事業を成長ドライバーに位置付けており、今後も継続した投資が行われる可能性が高いですが、通販事業の堅固な収益とソリューション事業の成長、コストコントロールによる利益確保により、財務改善は順調に進むと思われます。
【PROFILE】戸松信博(とまつ・のぶひろ):1973年生まれ。グローバルリンクアドバイザーズ代表。鋭い市場分析と自ら現地訪問を頻繁に繰り返す銘柄分析スタイルが口コミで広がり、メルマガ購読者数は3万人以上に達する。最新の注目銘柄、相場見通しはメルマガ「日本株通信」にて配信中。