日本企業は在宅勤務に消極的だと言われ、実際、新型コロナウイルス対応でテレワークが推奨されていても、結局は出社している会社員たちが後を絶たない。日本企業におけるテレワーク導入の問題点とは何か。経営コンサルタントの大前研一氏が解説する。
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新型コロナウイルス禍により、原則として「在宅勤務」「テレワーク」にシフトする企業が続出している。
報道によると、たとえば日立製作所は、来年4月から社員3万3000人の在宅勤務の比率を50%程度にする。富士通は、約8万人の国内グループ社員を対象に在宅勤務を標準とした働き方に移行し、2022年度末までにオフィスの規模を現在の半分ほどに縮小する。菓子大手のカルビーも、本社や地方拠点のオフィスで働く社員は原則テレワーク(在宅勤務)を無期限で継続し、業務に支障がなければ単身赴任も解除して家族と同居できるようにするという。
しかし、日本企業が在宅勤務・テレワークで労働生産性を上げるのは至難の業であり、現状を維持することさえも難しい。なぜなら、在宅勤務・テレワークに移行する際の最大の課題は従来の「メンバーシップ型雇用」から「ジョブ型雇用」にシフトできるかどうかであり、それを短期間で実現することは日本企業にはほぼ不可能だからである。
ホワイトカラーに関する「ジョブ型雇用」とは、仕事内容、目的、目標、責任、権限、知識、スキル、経験、資格、学歴などを詳細に記述した「ジョブディスクリプション(JD/職務記述書)」という書類に基づいて雇用する制度で、欧米では一般的なスタイルだ。労働者はジョブディスクリプションに書かれていない命令(職務の変更、転勤、残業など)に従う義務はない。
一方、日本で一般的な「メンバーシップ型雇用」は、仕事内容や勤務地などを限定せず、日本特有の「年功序列」「終身雇用」「新卒一括採用」などを前提にした「日本型雇用」とも呼ばれる制度だ。
言い換えれば、ジョブ型は「仕事に人を割り当てる」雇用形態、メンバーシップ型は「人に仕事を割り当てる」雇用形態である。