▲7.8%の内訳を寄与度でみると、内需が▲4.8%、純輸出(輸出-輸入)が▲3.0%。内需の中では、個人消費が▲4.5%で、設備投資は▲0.2%に過ぎない。景気の未曽有の落ち込みは、個人消費の壊滅的な悪化が主な要因だ。
足もとの景気を循環面からとらえると、2018年10月をピークに後退期に入っている。消費税増税はピークアウト後の2019年10月に行われた。そうした厳しい条件の中で、新型コロナウイルスの感染が発生、拡大。禁止に限りなく近い入出国制限に加え、県を跨いでの移動制限、エンタメ・イベントの自粛、不要不急の外出抑制、その他「三密」を防ぐための数々の行動制限によって消費は大きなダメージを受けている。
新型コロナウイルスへの対応は不可欠だが、景気とのバランスも重要である。消費需要を引き上げるといっても、人の欲求をコントロールするのは簡単ではない。所得の補償は一時凌ぎにすぎず、そもそも財源が足りない。将来への不安を和らげるといっても、雇用対策には決め手がなく、難しい。
せめて消費意欲の旺盛な若い世代、働き盛りの世代の消費を邪魔しない政策が実施できないものだろうか。病院での感染予防対策、高齢者への配慮を充分行った上での話だが、感染対策として行われている数々の規制を見直すことを視野に入れてもよいかもしれない。
現段階で新型コロナウイルスは、日本全体の死亡者数に変化を与えるほどではないという点では、他の感染症と変わらない。日本経済は今や瀕死の状態であることも、よく知っておきたい。
文■田代尚機(たしろ・なおき):1958年生まれ。大和総研で北京駐在アナリストとして活躍後、内藤証券中国部長に。現在は中国株ビジネスのコンサルティングなどを行うTS・チャイナ・リサーチ代表。メルマガ「田代尚機のマスコミが伝えない中国経済、中国株」(https://foomii.com/00126/)、ブログ「中国株なら俺に聞け!!」(http://www.trade-trade.jp/blog/tashiro/)も展開中。