一方、同地と並んで都内有数の高級住宅地として知られている世田谷区・成城にはさらに厳格な「成城憲章」と呼ばれる“紳士協定”が存在する。約10年前に140平方メートルの土地を購入し、4LDKの邸宅を建築したという佐藤ゆきこさん(仮名・52才)がこっそり明かす。
「建築物の高さは10メートルまで、敷地面積は250平方メートル以上、細分化する場合は125平方メートル以上の確保、敷地のうち20%以上は緑にする…など、9項目にわたり細かいルールが決められています。私は結婚と同時にここに来たので地元との違いに驚きました。“紳士協定”を破らないようにするため、出費がかさみました」
こうしたルールの「根底にあるのは、街への愛着」と語るのは、昭和4年から今年3月まで約90年にわたり田園調布で書店『玉泉堂』を営んでいた、生まれも育ちも田園調布という加藤浩一さん(85才)。
「家の高さから壁の色までうるさく言うのも、みんなが暮らしやすい街にしたいからなんだよね。勝手を許すと、緑がどんどん減ってしまうの。戦前ここに陸軍の高官が暮らしていたときは、塀を高くしようものなら『おれの目の黒いうちは、勝手は許さん』と怒鳴りつけたという話が残っているくらい、この街をつくった渋沢栄一が掲げた自然と調和した街づくりという理念が、暗黙の了解として住民の間に存在していたのでしょう。この気持ちは伝統的なものかもしれないね」
とはいえ、前出の成城の住民・佐藤さんのつぶやきも気にかかる。
「正直、新参者としてはしんどい部分もあります。子供が小さいときに『ずいぶんにぎやかね、私が子供を育てているときは静かにしなさいってことを徹底していたのよ』なんて言われてしまったこともありますし、景観は美しいけど、本当にこの街に深い愛か覚悟がないと耐えられないかも(苦笑)」
愛と覚悟、そして何よりお金が必要なのは間違いない。
※女性セブン2020年9月3日号