新型コロナウイルスの第二波がやってきていると言われているが、今後の見通しはどうなるのか。経営コンサルタントの大前研一氏が、1年延期された東京五輪開催の実現可能性について考察する。
* * *
安倍晋三首相の健康不安説がくすぶっている。本稿掲載『週刊ポスト』発売日の8月24日は、くしくも安倍首相が通算在任期間だけでなく、第二次政権発足後からの連続在任期間でも佐藤栄作氏を抜いて歴代最長となる日である。野党が要求した臨時国会も開かず、粛々とこの“歴史的な日”を迎えた安倍首相にとって、もはや憲法改正は事実上不可能なので、今後も政権を維持できるようであれば、残る大きな目標は東京五輪・パラリンピック開催だけということになる。
報道によると、安倍首相は7月22日の新型コロナウイルス感染症対策本部会合で「東京五輪の開催に向け、アスリートや大会関係者の入国に向けた措置を検討していく」と改めて開催への不退転の決意を表明したという。もともと安倍首相は「東京五輪を開催した首相」というレガシー(遺産)を残すことに固執している、と私はみていた。
その場合、自民党総裁任期が切れる来年9月末までの開催が必要条件になる。だから2年後への延期も念頭にあった東京五輪大会組織委員会の森喜朗会長との会談で「1年程度の延期」を主張し、IOC(国際オリンピック委員会)のトーマス・バッハ会長の合意も取りつけたのだろう。
東京五輪開催の可否判断は「来春」が最終期限と言われているが、世界の新型コロナ禍がそれまでに終息するとは考えにくいので、現実的には今年末、できれば10月くらいに判断すべきだと思う。
私は経営コンサルタントや国家アドバイザーとして、企業や行政府などの意思決定者の決断を半世紀近くにわたり手伝ってきた。では、もし私が東京五輪のアドバイザーだったら、開催するか否かをどのような基準で判断するか、それを提示してみたい。