足もとのアメリカ景気は、新型コロナウイルス感染拡大の影響もあって、第二次大戦後最悪の状況だ。新型コロナ用のワクチン開発について、株式市場は楽観的に見ているようだが、過去のワクチン開発の歴史をみる限り、1年程度の短期間で安全で信頼性の高いワクチンが完成したことはない。新型コロナの封じ込めには時間がかかり、景気への悪影響は長期化する可能性もあるあろう。
バフェット氏が、金への投資以上にレバレッジのかかる金鉱株に投資したのは、悲観的なグローバル経済の見通しによりドル安傾向が続き、金価格の先行きに強気になっているからではないだろうか。
日本の商社株を大量保有
バフェット氏は8月30日、90歳の誕生日に日本の大手商社(伊藤忠、丸紅、三菱商事、三井物産、住友商事)の株式を1年かけて買い増し、それぞれ5%を少し超える株式比率まで買い込んだと発表した。バークシャー・ハサウェイの子会社を通じての投資ではあるが、総額は62億5000万ドルを投じており、今後、持ち株比率が9.9%に達するまで買い増す用意があるとしている。
日本の商社の業態は世界的にみれば、コングロマリットの範疇にある。石油、石炭、天然ガス、鉄鉱石などの金属資源ビジネスが収益の柱だが、インフラ設備、機械、化学製品、金属製品、食品など多様な事業を展開しており、トレーディング業務や、事業投資業務なども行っている。
長期投資を主体とする機関投資家の間では、環境、社会、ガバナンスといったESGを重視する投資理念が普及してきたが、そうした投資理念からすれば、日本の商社は投資対象にはなりにくいはずだ。
環境重視の考えから、まず、資産ビジネスが外れる。また、日本の商社は非常に多様な分野で事業を展開しているが、事業が分散し過ぎている。各事業の経営状況をしっかりと把握し、監督管理し、収益が上がるよう経営に関与していかなければならないが、それができていないところに弱点がある。しかも直近では、エネルギー、原材料価格が下落しており、足元の業績は良くない。新型コロナの影響は長引くとみており、業績見通しも良くない。「バフェット氏はなぜ今、商社株を買うのか理解し難い」というのが多くの投資家の共通した印象ではなかろうか。