その国民にとって危険な政権の意思決定の姿が、今回のベーシックインカム導入の動きの裏で浮かび上がってきた。
ブレーンたちが菅首相に急進的とも言える社会保障改革を実行させようとしているのは、それが今後のコロナ対策と、増え続ける社会保障費問題を一挙に解決する方法だからだ。
現在、コロナによる休業者数は全国220万人にのぼる。特例で延長されている政府の休業補償(雇用調整助成金)の期限が今年12月に切れれば、失業者となって町にあふれ、失業率はすぐに戦後最高の5.8%までハネ上がるとの試算がある。経済回復は遠い先の話で、事態はさらに悪化が予想される。そうなれば生活保護の申請が殺到し、社会不安が広がり、財源はパンクする。そこで社会保障財源の“流用”に目をつけた。
〈おそらく経済が本格的に回復するまでには、数年はかかるでしょう。もし一回限りの給付(編集部注・特別定額給付金の10万円)で終われば、それまでの長い期間に、生活破綻する人がどんどん増えてしまいます。そこで考えられるのが、国民一人当たり七万円程度を毎月給付するという案です〉(『ポストコロナの「日本改造計画」』より)
社会保障をベーシックインカムに統一して生活保護の代わりに国民全員に7万円配れば、当面のコロナ生活破綻は回避できる。
しかも、今後、国民の医療費や介護などの費用が膨れあがっても、政府は「100兆円」を配るだけで、あとは「自己責任だ」と新たな財源の心配をする必要はない。国民のセーフティネットを切り捨てることで、「増税なき財政再建」を実現しようという国家の陰謀である。国民はその対策を考えることが急務だ。
※週刊ポスト2020年10月16・23日号