真壁昭夫 行動経済学で読み解く金融市場の今

実体経済と乖離した株高を演出する「フレーミング効果」とは

 まして米国市場では、GAFAM(グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン、マイクロソフト)を中心とした巨大IT企業がコロナ禍で業績を拡大しており、それらをはじめとした「NASDAQ100」(米ナスダック上場の100銘柄)は今や“最強の株価指数”と呼ばれ、世界中の投資家から資金を呼び込んでいる。当面その勢いが衰える可能性は低いだろう。

 日本では、菅政権がデジタル庁の創設を唱え、「デジタル化」を加速させようとしているが、残念ながら日本のIT分野は米国に比べれば「400mリレーで200mくらい出遅れている」ほど大きな差が生じていると言わざるを得ない。

 もちろん、米国株も一直線に上昇するわけはなく、下落と上昇を繰り返しながら推移していくだろう。ただ、世界的な資金余剰状態と「フレーミング効果」は今後も続くと見られる。特に機関投資家が一時的に安くなったタイミングで株を買う「押し目買い」をすることで下落時も盛り返し、当面は上昇していくことが予想される。現在の株高を、実体経済と乖離した「バブル」と指摘する声は多いが、市場参加者の“思い込み”によって、この先、まだ株価が上昇する余地はあるだろう。。

 合理的な判断を下せば、コロナ収束の兆しが見えるまで株には手を出さないほうが賢明かもしれない。しかし、現実には合理的な説明がつかないところで株価は上昇する。一見、見えないところで広がっている「フレーミング効果」の有効性が続くのであれば、当面は米国株につられる格好で日本株も大きく下がることはなく、強気相場が続くと見ることができそうだ。

【プロフィール】
真壁昭夫(まかべ・あきお)/1953年神奈川県生まれ。法政大学大学院教授。一橋大学商学部卒業後、第一勧業銀行(現みずほ銀行)入行。ロンドン大学経営学部大学院卒業後、メリルリンチ社ニューヨーク本社出向。みずほ総研主席研究員、信州大学経済学部教授などを経て、2017年4月から現職。「行動経済学会」創設メンバー。脳科学者・中野信子氏との共著『脳のアクセルとブレーキの取扱説明書 脳科学と行動経済学が導く「上品」な成功戦略』など著書多数。

注目TOPIC

当サイトに記載されている内容はあくまでも投資の参考にしていただくためのものであり、実際の投資にあたっては読者ご自身の判断と責任において行って下さいますよう、お願い致します。 当サイトの掲載情報は細心の注意を払っておりますが、記載される全ての情報の正確性を保証するものではありません。万が一、トラブル等の損失が被っても損害等の保証は一切行っておりませんので、予めご了承下さい。