別掲のマップ(*)にもまとめたが、都会の中には都市開発によって水害リスクを感じさせなくなった地域やスポットが無数にある。専門家たちが「明らかに危険」と注意喚起する場所ばかりだが、人々はそれを知らずに暮らしたり、利用したりしている。
【*マップの濃いグレーの部分は、平均海面以下。薄いグレーの部分は、各月の最高潮位を平均した水面以下。斜線の部分は、防波堤などを設計する際に想定する最高潮位以下】
大きな被害を逃れてきたという幸運もあったはずだ。たとえば、今年9月上旬に日本に接近した台風10号は、その直前まで「昨年の19号よりも強力」とされ、最大級の警戒が呼びかけられた。ところが、予想していたより勢力が弱まるのが早く、日本に近づいたときにはほとんど雨量もなかった。
実は、現在の科学をもってしても台風の進路や勢力を正確に予想するのは難しいのだ。「過去に何も起こらなかったから大丈夫」と考えることが最も危険だと土屋さんは警鐘を鳴らす。
「2018年に起きた西日本豪雨で大規模な水害に見舞われた岡山県倉敷市真備町では51人もの人が亡くなりました。水害後に地域の人たちに調査したところ、8割以上の人が水害ハザードマップで危険性を指摘されていることを知っていたと回答している。それなのに被害を免れなかったのは、まさに“自分は大丈夫”“いままで経験したことがないから逃げなくていい”などと根拠なく思い込む『正常性バイアス』が悲劇につながったことを表しています」
※女性セブン2020年10月22日号