そして、子供の数が多ければ多いほど経済的なメリットがあるようにすることだ。たとえばスウェーデンやフランスでは、第二子、第三子と子供が増えるに従って児童手当が増額される。フランスの場合、子供が多くなるほど所得税負担も緩和される。
そういう根本的な対策を講じずに、既存の制度や事業をチマチマといじっても、決して合計特殊出生率は上がらないだろう。
また、前号でも槍玉に挙げた菅首相肝煎りの「ふるさと納税制度」は何が目的なのか、私は全くわからない。東京などの大都市に集まりすぎている税金を地方に回すという目的であれば、地方交付税の配分比率を増やせば済む話だ。
そもそも国の借金が1100兆円を超えてGDPの2倍以上に達している日本の国家的な課題は、どのようにして税収を増やすか、財政を改善するか、ということである。しかし、ふるさと納税制度は、そのどちらにも無関係だ。
問題続出の「Go Toキャンペーン」や意味不明の「ワーケーション」も含め、菅首相の発想は田舎の夏祭りで寄附金を集める世話役のようなレベルであり、経済のケの字もわかっていないと思う。
10月から始まった「Go Toイート」に至っては、業績が悪化しているグルメ予約サイトの救済が目的ではないか、と疑ってしまうほど複雑だ。食事代をその場で割引し、飲食店が還付請求したり、一定期間は消費税を免除したりといった顧客に負担のかからないやり方を工夫するべきである。
【プロフィール】
大前研一(おおまえ・けんいち)/1943年生まれ。マッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社長、本社ディレクター等を経て、1994年退社。現在、ビジネス・ブレークスルー代表取締役会長、ビジネス・ブレークスルー大学学長などを務める。最新刊は小学館新書『新・仕事力 「テレワーク時代」に差がつく働き方』。ほかに『日本の論点』シリーズ等、著書多数。
※週刊ポスト2020年10月30日号