雇用延長を選ぶと給料は半分以下に減る。心配なのは、定年後も会社に残った先輩たちは待遇の悪化でやりがいを失って2年ほどで辞めていくケースが多いことだ。
再就職も考えたものの、若い頃はSE(システムエンジニア)でパソコンは得意だが、ブランクが長すぎていまさら現役に戻るほどのスキルはない。
「やっぱり雇用延長は居心地が悪いんでしょうね。それでも、住宅ローンがまだ残っているから、結局、生活を考えると我慢しながら70歳まで会社にしがみつくのかもしれません」(A氏)
3人の子供たちが定年を前に巣立ってくれたのが救いだという。
「定年後も会社に残ろうと漫然と考えていた人ほど雇用延長で不幸になる」
そう指摘するのは社会保険労務士でファイナンシャルプランナーの北村庄吾氏だ。高齢社員にすれば、現役時代と能力は変わっていないし、若手よりいい仕事ができる自信がある。それなのにキャリアを活かせる満足な仕事は与えられず、同じ時間働いても給料は安い。それでプライドが耐えられずに辞めていく人が少なくないのが雇用延長の現実だ。
「経営者から見れば、国の政策で仕方なく65歳まで雇用延長させられている。それがコロナで経営環境が厳しいなか、来年からは70歳まで努力義務になる。企業は必要なスキルのある人材は残ってほしいが、多くの“お荷物”の高齢社員は追い出したいのが本音です」(北村氏)
これから雇用延長はますます居心地が悪くなる。
※週刊ポスト2020年11月6・13日号