中国の電気自動車メーカーとして真っ先に思い浮かぶのは、米著名投資家、ウォーレン・バフェット氏が投資するBYDであろうが、その株価が足元で急騰している。
香港に上場するH株(01211)の株価は、8月20日に記録した安値68.8香港ドルをボトムとして上昇トレンドを形成、11月2日には終値で173.7香港ドルを記録。2か月半で株価は2.5倍に跳ね上がっている。同じ期間の本土A株の方は少し上昇率が低いが、それでも2.2倍に上がっている。
株価急騰の要因は業績が大幅に回復しているからだ。1-9月期では12%増収、117%増益。7-9月期では41%増収、1363%増益である。中間期の段階では連結対象であるスマホ部品メーカーBYDエレクトロニクスの業績好調に支えられた部分もあったが、7-9月期に入ると自動車販売が好転、こちらが業績を牽引している。7月にフルモデルチェンジした主力EVセダン車“漢”(PHVタイプもある)の売れ行きが予想以上に良く、生産が追い付かない状態だ。マイナーチェンジを行ったPHVタイプのSUV車“唐”も堅調。10-12月期に入っても予約状況を見る限りでは、いずれも好調が続いているようだ。
上半期の中国本土電気自動車市場は、新型コロナ禍の影響があって、市場全体はマイナス成長に落ち込んだ。しかし、昨年末から上海ギガファクトリーでの生産を開始したテスラのモデル3が市場を席巻、いきなり本土販売トップに躍り出た。これに危機感を持った国内の電気自動車メーカーが巻き返しを図っている。電池、部品メーカーも巻き込んで、本土新エネルギー自動車市場は今後、急拡大すると予想される。
新型コロナ禍が発生する前の本土新エネルギー自動車市場は、補助金の不正取得の横行で、当局の厳しい粛清にあい、補助金が縮小されるといった逆境にあった。その影響で2019年7月以降、新エネルギー自動車市場は縮小に転じ、そこに新型コロナ禍の発生で1-3月期は業界全体で厳しい状況に追い込まれた。