新型コロナで大きなダメージを受けた飲食業界では、生き残りをかけた大胆な業態転換や「新しい接客スタイル」の導入がトレンドになっている。大手飲食チェーンでは、店員に代わる配膳AIロボットの実証実験がスタートしているが、思いもよらぬアクシデントが発生することもあるようだ……。
10月5日、外食チェーン大手のワタミが、従来の居酒屋店舗120店を新業態「焼肉の和民」に転換すると発表した。コロナの影響で居酒屋業態の需要が大幅に縮小する中、中核事業を居酒屋から焼肉店にシフトすることで存続・巻き返しを狙う。
同店では税抜き2880円からの食べ放題コースを中心に、独自開発のブランド和牛を提供。ラーメンやデザートなどサイドメニューを充実させ、女性やファミリー層の取り込みを図る。そうした中で注目されたのが、肉や料理を運ぶ特急レーンと、配膳・下げ膳を行なうAIロボットの導入だ。ワタミ広報担当者が説明する。
「レーンとロボットの導入により、お客様と従業員との接触は従来の居酒屋業態に比べ、8割減らすことが可能になりました。新型コロナウイルスの感染防止はもちろん、従業員の負担軽減にも大きく貢献しています。人件費の圧縮分を商品やサービスに投じられるメリットも大きい。ロボットは小さなお子様にも人気で、ご家族連れに喜んでいただいています」
「焼肉の和民」で試験的に導入されたロボットは、日本システムプロジェクト社製と、人型ロボット「Pepper(ペッパー)」を送り出したソフトバンクロボティクス社(以下ソ社)の2機種。10月中旬の夕食時、40代記者が家族を伴い都内の店舗を訪れると、2台のロボットが狭い店内を忙しく動き回っていた。
通されたのは、店舗奥の4人掛けテーブル席。税抜き4380円の100分食べ放題コースを選び、銘々が好きなものをタッチパネルで注文する。最初の注文からわずか5分ほどで料理を運んできたのは、ソ社製のロボット「Servi(サービィ)」だ。上下3段のトレーに料理を満載し、絶妙なバランスをとりながらテーブルに近づいてくる。配膳後は、他のテーブルの空いた皿を下げながら厨房に戻るなど、不慣れなアルバイトより手際が良いようにも見える。