日本国内の移動に欠かせない新幹線。東京駅は東北新幹線や東海道新幹線の起点の駅として知られるが、そのお隣の駅にもそれぞれの歴史と役割がある。上野駅と品川駅が新幹線の停車駅になった経緯と現在の役割について、鉄道ジャーナリストの梅原淳さんが解説する。
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時速200kmを越える高速での走行が“売り”の新幹線。その強みを発揮するには、駅と駅の間の距離は出来る限り長い方が良い。なぜなら、駅を出発してから、例えば東海道新幹線の最高速度である時速285kmに達するまでには6km近くの距離が必要で、この速度から駅に停車するまでにも、やはり同じ程度かやや長い距離が必要だからだ。少なくとも15kmは欲しいところであり、実際、新幹線停車駅の建設時は、駅間の距離を更に長い30km前後となるように設計される。
全国の新幹線の中で、駅と駅の間の距離が最も長いのは、北海道新幹線の奥津軽いまべつ~木古内間の74.8km。両駅の途中には長さ53.85kmの青函トンネルがあり、駅を必要とする都市が存在しないからだ。一方、新幹線の駅間が最も短いのは東北新幹線の東京~上野間の3.6km。東海道新幹線の東京~品川間も6.6kmと短い。これだけ距離が短いと、駅を出発した列車は時速200kmを超えるどころか、時速100kmにも達しないうちに次の駅に着いてしまい、高速が売り物の新幹線の特徴は生かせない。
1日の平均乗降者数(2019年度)を見ても、東北新幹線の東京駅が約15万人なのに対し上野駅は約2万4000人、東海道新幹線の東京駅も約20万人に対し品川駅は約7万4000人と、東京駅の平均乗降者数は上野、品川の両駅を圧倒しており、高額な建設費を考えると新幹線の停車駅にする必要はないように思える。
では、なぜこの2駅は新幹線の停車駅となったのか。その理由は、上野、品川の両駅とも、ターミナルである東京駅の役割を補うサブターミナルとしての役割を担っているからだ。